藤山家においでよ

横浜のパワースポットと化した藤山家。施術、お料理、お話し会などを通じて『幸せに生きる』を実験、研究しています。

私のコト 79

暑いっすねー。

 

やっと“夏!”だ!!

 

この暑い中、私は自叙伝を書くのです。

 

つづき行きます!

 

前回はこちら↓

私のコト 78 - 藤山家においでよ

 

 

Tさんから「明日クラブLのママに紹介する」と言われ、若干怖気づく小娘ゆっきぃ。

ミナミで一番大きい、しかも老舗クラブ。そのオーナーママがどんな人なのか?

自分をどう評価するのか?今日の夜にはその時間がやってくる。

 

 

目が覚めたらお昼だった。

お布団の中にTさんはもういない。

 

「コーヒー屋さん行ったのかな…」

 

独り言を言いながらボーっと起きる。

その時ふいにTELが鳴った。

 

着信の相手は『木田さん』だった。

 

ドキッとしながらTELに出る。

 

「おぉー…」

 

なんとも言えない声。

 

「あ…おはようございます。」

 

ドキドキしながらやっと言えた言葉。

 

「…なんで帰ったんや?」

 

ちょっと拗ねた声。

可愛すぎる。

 

「ふふ。だって寝ちゃったから。」

 

「……。なんで帰んねん…ブツブツ。」

 

木田さんが拗ねてる。

拗ねてブツブツ言ってることがなんだかとても嬉しい。

 

「んふふふ。怒ってるん?」

「怒ってるわ。帰らんでもええやろぉ…」

「寝ちゃったのはそっちですよねぇ?」

「起こしたらええやかんかぁ。」

「起こせませんよ。」

「なんでやー!」

 

あれ?

なんか前より普通に木田さんと話せてる。

そして私が帰ってしまったことを素直に残念がってくれている。

 

う…嬉しすぎる…

 

「ゆきえはアホや。アホー!」

「あはははは!アホはそっちやないですかー!」

「なんで俺がアホやねん!」

「あはははは!」

 

「……ゆきえ…」

 

ん?

急に真剣な声。

 

「え?どうしたんですか?何?」

「…アホ……なんでもないわ。」

「え?なに?気になるやん!」

「…アホ……帰りやがって。」

「…ごめんなさい…」

「……会いたいなぁ…」

 

え?え?え?え?

えーーーーーーー?!

 

会いたい?私に?会いたいって言った?

え?え?え?え?え?

きゃーーーーーー!!!

 

ドキドキドキドキ…

木田さんが私に会いたいって言った!

木田さんが私に会いたいって言った!

木田さんが私に会いたいって言ったーーーーー!!

 

私はこの時天にも昇るような気持だった。

 

「へ?ほんまですか?!ほんま?ほんまに?」

「…うるさい…アホ…」

 

その後何をしゃべったのか記憶にない。

ただただ嬉しすぎて舞い上がっていた。

 

「…じゃあな。またTELするわ。」

「はい!!また連絡ください!」

「…ゆきえ…」

「はい?」

「…浮気すんなよ。」

「え?え?え?」

「だから!…浮気…すんなよ。」

「はいっ!!!」

「じゃあな。」

 

 

木田さんが『浮気すんなよ!』って言った!

何?

まさかの独占欲?

木田さんが?

 

まーじーでうーれーしすーぎーーーー!!

 

「え?何?今の電話なに?どういうこと?何?どうなっちゃった?」

 

気持ちが昂り、一人でニヤニヤしながら部屋をうろつきまわる。

 

『浮気すんなよ』の言葉に元気よく『はい!!』と応える私。

お前、昨日誰とSEXしてるんだよ。

でも今はそんなのどうでもいい!

 

…いや、どうでもよくないだろ。

 

その時ガチャガチャと部屋の鍵が開く音がした。

 

ハッとして、どうにもとまらないにやけ顔をなんとか元に戻す。

 

「ゆっきえさーん♪起きたん?」

 

上機嫌のTさんが帰ってきた。

 

「うん。おはよう!コーヒー屋さん行ってたん?」

「うん♪そろそろゆきえさんが起きる時間やと思って帰ってきたんやー♪」

 

はぁ。

ナイスタイミング。

木田さんとのTELの最中じゃなくてよかった。

 

「今夜、由紀を連れていくやろ?」

「うん。」

 

由紀とはクラブLのオーナーママのことだ。

Tさんは古くからの付き合いらしく、いつも『由紀』と名前で呼んでいる。

 

「由紀はミナミでも有名なママやからなぁ。今日りおの店に連れて行ったら絶対りおはびっくりするぞぉ~!」

 

Tさんはいたずら坊主のような笑顔でそう言った。

 

「りおママは由紀ママとは面識があるん?」

「おー。りおも昔は割と売れっ子のホステスやったからな。何度かは一緒になってるんやないかなぁ?クラブLにお客さん迎えにいったりとかあったやろうし。

りおはもちろん由紀ママのこと知ってるしな。由紀もりおのこと知ってるやろなぁ。」

 

お店の“ママ”には二種類ある。

誰かに雇われてママをやっている『雇われママ』と

自分でお店を開いている(経営者である)『オーナーママ』だ。

後ろにパトロンがいることがほぼだけど、経営を自分でしているママは

みんなオーナーママだ。

 

りおママも由紀ママもどちらもオーナーママだ。

 

でも…

 

規模も金額も何もかもが違いすぎる。

きっとりおママは由紀ママに頭が上がらないだろう。

 

「あれ?そういえば…私、りおママにお店辞めるなんて一言も言ってないし、

ていうか、まだそんなつもりなかったし…

今日由紀ママをお店に連れてくるって…

どうするん?」

「大丈夫大丈夫!前からりおに由紀ママ一回連れてきてって言われてたんや。

由紀が一度でもお店に来たらハクがつくからなぁ。お客さんにも自慢できるんや。」

 

由紀ママが一度でもお店に来たらハクがつく?

そんなに有名なすごい人なん?

 

「へー…そんなにすごい人なんやなぁ…」

「大丈夫大丈夫!ゆきえさんなら大丈夫やって!俺もついてるんやし!わはははは!」

 

Tさんはずっと嬉しそうだ。

自分の力をやっと誇示できる!と意気込んでるのがよくわかる。

 

そうだった。

すっかり忘れていたけど、Tさんはミナミのホステスさんたちから結構狙われるくらい

みんなが味方につけておきたい男性だった。

どこにでもだいたい顔がきく。

どこのママもだいたい知っている。

そんな人だった。

 

「緊張するわぁ…」

「大丈夫大丈夫!」

 

そんなやりとりを何度もした。

 

同伴の食事をしながらも

 

「緊張して食べられへん。」

「大丈夫大丈夫!わははは!」

 

お店に行く時も

 

「もうお店行きたくない。」

「大丈夫!ゆきえさんらしくないで!」

 

そんなこんなでお店に到着。

 

「おー!りお!相変わらずしけた店やなぁ!わはははは!」

「なんやのTちゃん!久しぶりに来たと思ったらなんてこと言うねん!」

 

相変わらずの二人のやりとり。

私はひきつった笑顔でそれを見守る。

 

「りお!今日はこれから由紀を連れてくるからな!」

 

突然そう言われてりおママはびっくりした顔をする。

 

「え?!由紀ママ?!今日?!なんやの突然!もっとはよ言うてやぁ~!!」

「なんでや?!前からはよ連れてきてって何度も言うてたやないか!」

「そやけど…そない急に言われても…」

「なんや?!ええやろ?席にはゆきえさん着けてや!」

「そりゃゆきえちゃんを着けるわ。Tちゃんのお気に入りなんやから。私も着いていいんやろ?」

「お前が着かないでどうするんや。おかしな奴やなぁ。わははは!」

 

私はずっとひきつった顔で座っていた。

りおママがひるんでいる。

りおママがひるむ相手なのだ。

 

「じゃ、ゆきえさん。由紀を迎えに行ってくるからな。」

 

小声でTさんが言う。

 

「う、うん。わかった。」

 

「じゃりお!由紀迎えに行くわ!すぐ戻るから!」

「わかったわぁ。待ってるわ。」

 

Tさんがお店から出て行った。

すぐにりおママが私の隣にきてこう言った。

 

「由紀ママは絶対に敵にまわしちゃいけない人やで。ミナミでやっていくなら

あの人は味方にしておいた方がええ。“こっち”のバックもたくさんついてる人やからなぁ。」

 

りおママは自分のほっぺに人差し指でキズを付ける仕草をした。

 

 

さあ!

由紀ママはどんな人なのか?

どんな反応されるのか?

 

つーづーくー!