藤山家においでよ

横浜のパワースポットと化した藤山家。施術、お料理、お話し会などを通じて『幸せに生きる』を実験、研究しています。

私のコト 83

気付いたらだいぶ久しぶりな投稿になってりましたー!

お久しぶりです!

 

待っててくださっている方々、もしいらっしゃったら申し訳ありませんでしたー(;'∀')

 

さて、さっそく続きです!!

 

前回はこちら↓

私のコト 82 - 藤山家においでよ

 

 

りおママが絶対に逃したくないと力説するほどの上客、八尾さんの気を引くことができなかった小娘ゆっきぃ。

気を引くどころか、Tさんの為に先に帰ってしまうという行動に出たことをひどく後悔していた。

そんな八尾さんのことはもうあきらめていたある日、お店に出勤したころに一本のTELがかかってきた。

 

 

「ママー!お電話でーす!」

 

ボーイさんがママを呼ぶ。

 

「はいはーい!もしもし?あらっ!!こないだがありがとうねぇ!」

 

ママの弾むような声が店内に響く。

 

「えっ?!明日?うん。うん。え?ゆきえちゃん?うん。そう。ちょっと聞いてみるわぁ。後でTELしてもいいやろ?じゃ、またあとで~。」

 

ゆきえちゃん?と

私の名前が出てきていたのがわかった。

 

電話を切るとママが私を手招きした。

 

「はい?なんでしょうか?」

 

ママの笑顔が心なしか引きつっている。

 

「あんな~、今八尾さんからTELやってんな。」

 

おっ!

八尾さんっ!!

 

「はい。そうだったんですね。」

「うん。でな、明日なんやけどな、一緒に食事したい言うてんねん。

ゆきえちゃんと私と一緒にって。」

 

え???

ママと私??

なんで私も一緒に?

 

私は頭の中が?マークでいっぱいだった。

 

「へ?私も?ですか?」

「そやねん。ゆきえちゃんも連れてくれって言うねん。」

「へ?だって…八尾さんとそんなにお話しもしてないですし…ママにメロメロー♡みたいな感じでしたしねぇ。あ!!だれか他にお客さんが一緒なんですかね?」

「なんでやろなぁー。ま、八尾さん一人ではなさそうやけどな。

てことなんやけど…ゆきえちゃん、明日同伴入ってない?行ける?」

「はぁ…はい。大丈夫ですけど…。私、行っていいんですかねぇ…。」

「なんやわからんけど連れてきてくれ言うてるのは向こうやねんから大丈夫も何もないやろー。」

 

ふーん…

ママと二人だと恥ずかしいのかなぁ…

 

「でー、明日は何食べに行くんですかねー?うひひー」

 

私はちょっと不本意なママの様子を察知し、ちょっとふざけて聞いてみた。

 

「ふぐやねんてー。ゆきえちゃん、ふぐ好きやろ?」

 

ふぐっ!!!

私はこの一言で明日の同伴が一気に楽しみになった。

 

「わわわわー!!急にめっちゃ楽しみになりましたーー!!ふーぐっ♪ふーぐっ♪」

「あははは!ほんまにゆきえちゃんはふぐが好きなんやなー!ま、明日頼むわな。」

 

この頃の私はふぐの美味さに魅了されていて、着く席着く席でふぐの話しばかりしていた。

結果、毎日の同伴メニューがふぐ、連日ふぐ、のような状態になったりしていた。

↑完全なる余談だけど。

 

ママから聞いた八尾さんとWさん達の関係性はこうだった。

 

八尾さんは○○建設のかーなーりやり手の営業本部長で、社長とも直にやりあったりできるような立場である。

部下もかなりの数抱えていて、八尾チルドレン的な人たちが派閥を守っているらしい。

 

そしてWさんは同じ○○建設の同じ営業で、Wさんもかなりなやり手らしいが営業部長の肩書きで、社長と直にやりあったりするような立場ではない。

部下ももちろんいるけれども、どちらかといえば仲のいい同僚と一緒に仕事を回しているようだ。

 

Wさんといつも一緒にいる木田さんは、若いころからWさんに目をかけてもらっていた下請けの会社社長。ずっと仲が良いらしい。

 

てことで、りおママ的にはどちらもすごく大切なお客さんだけど、ビジネス的により強くつながっていたいのは八尾さんの方らしい。

 

会社の立場も上だし、部下もたくさんいる。

取引先の接待にも使ってもらえる場面が増え、落とす金額も多いのは八尾さんの方だから。

 

そして、Wさんは八尾さんのことをあまり良く思っていないようだということを聞いた。

八尾さんの話がでるとすごく嫌な顔をするそうだ。

 

「ゆきえちゃん。Wちゃんと木田さんの前では八尾さんの話はしないでなー。」

 

ママから何度か釘を刺された。

 

大手建設会社の派閥がどんなものなのか、男性が仕事にどれほどまでにプライドを持っているのか、まだ私には何もピンとこなかったけどまーなんかいろいろ大変なんだろうなぁ…と思った。

 

木田さんには八尾さんのことちょっと聞いてみようかな、やめておいた方がいいのかな、あーでもちょっと聞いてみたいな、なんて考えていた。

 

 

お店はそこそこに忙しかった。

 

今日はTさんが奥さんと子供のところに帰ってる日だ。

アフターもなんとなく入りそうもなかったので、マキを飲みに誘った。

 

「もうすぐ終わりやんねー。マキ、今日なんか予定ある?」

「ないですよー。ゆきえさん、アフターは?」

「今日はなさそうな感じ。Tさんもおらへんねん。一緒に飲みに行かへん?」

「わー!嬉しい!ゆきえさんがアフターないの珍しいですね!行きましょ行きましょ!」

「うんうん♪」

「あれ?でも…せっかくTさんいないんだから、木田さんに連絡したほうがいいんじゃないですか?しました?」

 

マキったら…

イイやつなんだから。

 

木田さんとはこないだホテルに泊まって以来会ってない。

(SEXもしなかったし!)

でも、嬉しいことに毎日TELがかかってくるようになっていた。

ほんのちょっとの時間だし、なんの話しをするわけでもない。

ただふざけたりするだけのTELだ。

でも必ず最後にこう言うようになっていた。

 

「浮気すんなよ。」

 

私はその言葉を言われる度にうほーーっ!と叫びたいくらい嬉しかった。

そしてしおらしく答える。

 

「はい。しませんよ♡」

 

実際は…

…置いといて。

 

 

「木田さん?連絡してへんよ。でも今日のお昼にTELでしゃべったし。

ミナミにくるようなこと言ってなかったしな…。

ま、マキと話したいしええねんよー。」

 

 

マキと仕事終わりに飲む約束をして、間もなく終了する今日のお仕事に集中していたその時。

店のドアが開き、Wさんと木田さんが入ってきた。

 

きゃっ!!

 

木田さんの姿を見ると、条件反射のように体がキュッとなる。

と同時に胸がドキドキし始める。

 

マキが私に目配せをする。

いやぁ~ん♡のジェスチャーをこっそりしてマキを笑わせる。

 

ほんとにいやぁ~ん♡の心境だった。

 

「あらぁ~、Wちゃんと木田さんやないのぉ~!座って座ってー!」

 

りおママが私とマキをすぐに席に呼ぶ。

 

やった!!

 

今日は会えるわけないと思っていたのに会えた!!

 

「いらっしゃいませぇ~♪失礼しますー♪」

 

わざとクネクネしながら席に着こうとする私。

 

「なんやぁ?!失礼なら帰ってやー!」

 

いつものWさんの小ボケ。

 

「うっさいわ!座るでー!」

 

あー楽しい。

 

Wさんの席はほんとに楽だ。

木田さんもいるし、ほんとに楽しい時間だ。

 

「マキ~♡会いたかったぁ~ん♡」

 

Wさんが体をクネクネさせながらマキの手を握る。

 

「あははは!Wさん何言うてるんですかぁ~♪」

 

マキが可愛くあしらう。

 

私は木田さんのとなりに座ってチロッと木田さんを見る。

 

「今日来るなんてしらんかった。」

 

小声で木田さんに言う。

 

「おう。俺も来ると思わんかったんや。」

 

木田さんも小声で話す。

嬉しい。

 

「んふふ。」

 

Wさんはずーっとマキの手を握りながらクネクネしている。

 

「ちょっと!最近Wさんおかしいんちゃうの?マキの手をはなしなさい!!」

 

私はわざとマキの保護者役のように振る舞った。

 

「ゆきえはうるさいわぁ!あー!お前!さてはぁ~焼きもち焼いてるんやな!

ちゃうで!わしは、マキのもんやからな!」

「なにを言うてんねん!Wさんに焼きもちなんか焼くわけないやん!マキが心配なだけやんかー」

「うっさい!ゆきえはうっさいわー!」

 

50過ぎのおじさんとこんな会話をするなんて。

我ながらウケると思っていた。

 

もうすぐ閉店だ。

 

マキと二人で飲みに行く約束をしていたけど…

これは多分一緒にアフターに行く感じっぽかった。

 

「ゆきえー、この後飲みに行くぞー!な?ええやろ?マキ~♡」

 

Wさんが案の定誘ってきた。

 

マキと私は目配せで会話をした。

 

「ゆきえ。大丈夫やろ?行くやろ?」

 

木田さんはその目配せ会話に気付き、私に聞いてくる。

 

「あ、うん。大丈夫。さっきな、マキと二人で飲みに行こうって話してたんや。

でも木田さんと一緒のがええから。」

 

木田さんがソファーにもたれかかりながら私をジッと見る。

なんともいえない顔で私をジッと見る。

 

木田さんはこれをよくやる。

私はこれをやられる度にどぎまぎしてしまう。

 

「え…?えっと…何?」

 

目をそらしてどぎまぎして聞く。

 

木田さんはううん、と首をふる。

そしてそっと、かなり優しく、そっと髪に触れる。

 

そしてすぐに姿勢を変え、水割りを飲む。

 

こ…このやろー…

絶対わかってやってるだろ。

めちゃくちゃドキドキするやないかー!

 

 

相変わらず私は木田さんに翻弄されている。

 

翻弄されながら、4人でアフターに行った。

 

楽しく飲み、歌い、しゃべり、ふざけた。

 

もう夜中の2時だ。

 

今日はTさんがいない。

気を遣う相手がいないのはこんなにも解放感があるものなのか!と改めて感じる。

 

「そろそろ帰るかー!」

 

Wさんがそういいながら席を立とうとした。

 

「マキ!ほんまは話したいことあってんけど…また今度二人で飲もうな。」

「はい!でもー、ゆきえさん今日はよかったですねー!うひひ!」

 

マキは相変わらず優しい。

 

「なぁ?Wさん大丈夫?だいぶマキに甘えてへん?」

「だいじょうぶですよー!ね?Wさん?」

 

マキは酔っぱらってWさんの肩にもたれかかった。

 

「うおー!マキー!なんて可愛いんやー!」

 

マキはまだ21歳だ。

Wさんは50代。

 

ま、変なことはしないだろう。

娘みたいな可愛がり方なんだろうなーと感じる。

 

 

「マキー!送って行ったるわー!」

 

Wさんがマキと一緒にタクシーに乗ろうとする。

ん?

いいのか?と一瞬感じた。

 

「マキ!いいの?大丈夫?」

「え?大丈夫…ですよねー?!Wさん?!」

 

マキは酔っぱらっていた。

 

「あー?何が?!ゆきえー!お前うっさいわー!大丈夫に決まってるやろがー!送っていくだけやで!」

 

うん。

そうだよね。

大丈夫だよね?

てか、大丈夫ってなんだよ。

 

「うん。そやな。ごめんごめん。Wさん、ごちそうさまでした!マキのことお願いします!じゃあね。マキ。また明日ね!」

 

 

私はなんとなく不安な気持ちでマキとWさんを見送った。

 

「どないしたん?心配か?」

 

木田さんが優しい声で聞いてきた。

 

「うーん…別に心配ちゃうよ!へーき!」

 

「ふーん。じゃ、行こうか。」

 

木田さんは私の手をギュッと握った。

 

 

当たり前のようにホテルに入り、当たり前のように腕を組み、キスをしていた。

 

「ゆきえ。今日は勝手に帰るなよ。」

 

木田さんはそういいながら私を抱いた。

 

SEXの後、私はやっぱり気になって八尾さんのことを聞いてみた。

 

「あのさ、Wさんと同じ○○建設の八尾さんって知ってるん?」

「あー…八尾さんかぁ。知ってるで。なんで?」

 

一瞬木田さんの顔が引きつったのを私は見逃さなかった。

 

「うんとさ、こないだお店に来たんや。で、Wさんと同じ会社やし、同じ営業やろ?

だからどんな感じのつながりなのかなーと思って。」

 

こんな感じで大丈夫だろうか?

なんかダメなこと聞いてないだろうか?

 

「八尾さんなぁ…。よくは知らんけど…。まぁあんまりいい噂は聞かんなぁ…。Wさんとも反目(はんめ)っぽいしなぁ。」

 

ものすごく歯切れが悪い!

あんまり言いたくなんだということがわかった。

そして反目(はんめ)だということもわかった。

 

あ、解説です。

反目(はんめ)とは、まーいわゆる反りが合わないというか、両極にあるというか、

んーと、まぁ簡単に言っちゃうと仲が悪いって感じの関西弁です。

 

「ふーん…。あのさ、お店に八尾さんは来てることがわかったらWさん嫌がるんかな?」

 

「まぁ…、嫌がるっていうか、気分は悪いやろなぁ…」

「そっかぁ。うーん…」

「なんや?ゆきえは八尾さんに誘われてるんか?」

 

え?

焼きもち?

焼きもち焼く?

うひひ。

 

「ちゃうよ。たぶん八尾さんはママを狙ってるんやと思うんや。でもな、明日ママと一緒に同伴誘われたんや。」

「ふーん…」

 

あれ?

焼きもちは?

なし?なし?

 

「…浮気すんなよ…」

 

キターーー!!

 

「はい。しませんよ♡」

 

うひ。

実際は…

…置いといて。

 

 

Tさんに気兼ねなくゆっくりと木田さんとの時間を堪能し、朝まで一緒にいられた嬉しさで勝手に顔がにやけていた。

 

木田さんと別れお家に帰る。

 

木田さんとの時間の余韻に浸りながら、にやけたままもうひと眠りすることにした。

 

八尾さんかぁ…

同伴、どんな感じになるのかなぁ…

 

私はますます八尾さんへの興味が湧いてきていた。

 

どんな人なんだろう…

 

眠りから覚めたら、いよいよ八尾さんとのお食事が待っている。

 

 

 

つーづーくー

 

 

 

私のコト 82

さて、今日も続きいきましょかー!

 

楽しんでます?

 

私は楽しんでます。笑

 

前回はこちら↓

私のコト 81 - 藤山家においでよ

 

 

閉店間際、八尾さんという初めて会うお客さんが来店した。

りおママはかなり上機嫌で私を八尾さんのとなりにつけた。

八尾さんの態度を見て、りおママの期待には応えられそうにないと感じた小娘ゆっきぃ。Tさんも待っていることだし、早く帰りたいと思っていた。

 

 

 

「いやぁ~!!八尾さん!!どうしてはったん?!ほんまにっ!私のことなんて忘れてしまったんやないかと思って寂しかったんやからぁ~!!」

 

全員がやっと席に着き乾杯をすませた後、りおママは八尾さんに軽くタッチしながら言った。

 

「おーおー。ほんまにごめんやでぇ。なんやかやと忙しかったんや。ごめんやでぇ。

これからはまたちょいちょい来られそうなんや。またよろしくやでぇ。」

 

八尾さんはずっとにこやかに笑っている。

目が細く、にこやかな顔をしているとほんとに目がなくなってしまう。

薄い唇の大きな口。

 通った鼻筋。

髪はほとんど白髪の少し長めの髪型。

背が高く、肩幅がとてもがっちりしている。

 

にこやかな顔で終始優しい口調で話しているが、どこか威厳を感じる。

きっと仕事ではとても厳しい人なんだろうと思わせる雰囲気がある。

 

「ゆきえちゃん。八尾さんはね、○○建設のすごい地位の人なんよぉ!」

 

りおママが八尾さんの肩にタッチしながら私に得意げに言った。

 

「そうなんですかぁ?!すごい!!八尾さん、すごい方なんですねぇ!!」

 

私はほんとに驚いていた。

○○建設はWさんのいる会社だ。

Wさんと木田さんは昔から取引がある仲間だ。

Wさんもその建設会社ではかなり上の営業さんだと聞いている。

 

じゃあ…この八尾さんとWさんはどんな関係なんだろうか。

そしてもし私が八尾さんと懇意になったら、Wさんや木田さんはどんな反応をするのだろうか。

 

建設会社の派閥はかなりあると聞く。

同じ社内でいくつもの派閥がきっとあるんだろう。

 

りおママはどうやって付き合っているのか?

あとで聞いてみよう。

ちゃんとはっきりするまで、Wさんのことや木田さんのことは絶対に口に出さないようにしようと決めた。

 

「りおママぁ~そんなん言うなって!この人はなぁ、昔から高根の花でなぁ。

俺のことなんてまーったく相手にしてくれへんかったんやでぇ~」

 

八尾さんは連れてきた部下であろう人たちに大きな声でそう言った。

 

「いやだぁ~!よう言うわぁ!そんなん言うてぇ~。ま、ほんまのことやけどなぁ!あはははは!」

 

りおママはすごくご機嫌だ。

 

トイレに立つふりをしてマキに近寄る。

マキの耳元で小声で囁く。

 

「マキ、あの八尾さんな、Wさんと同じ会社の人らしいで。でも多分同じ派閥ちゃうと思うから、Wさんとか木田さんの名前だしたらあかんと思うわ。後でママに確認するけどな。いまんとこそれでよろしく。」

 

マキは真剣な顔でうんうんと二回頷いた。

 

私がトイレに行こうとするとTELが鳴った。

たぶんTさんだ。

 

「ゆきえちゃーん!TELはいってるよー!」

 

ボーイさんが私を呼んだ。

 

「もしもし?ゆきえさん?まだお客さんいるの?」

 

Tさんは明るい声で私に聞いた。

 

「うん。さっき初めてお客さんがいらしてね。でももうすぐ行くわ。ママのお客さんやから大丈夫と思う。待ってて。」

「うん!待ってるで!でも急がんでも大丈夫やからね♪ずっと待ってるから♪ゆきえさんのこと♡」

 

今日はTさんもかなり上機嫌だ。

 

席に戻るとママが私のそばにきて小声で話し始めた。

 

「ゆきえちゃん。この八尾さんはどーしてもつないでおきたいお客さんなんや!

もう帰りたいんやろ?でも、もう少しだけいてくれへんかなぁ。な!あとで八尾さんのことは説明するからな。な?」

 

ママにとってはどうしても離したくないお客さんだということがひしひしと伝わってくる。

でも肝心の八尾さんは私の方には目もくれない。

 

どうしたもんか…

 

「はい…。もう少しだけいますけど、ほんとに今日はもう用事がありまして…

すいません。でも!八尾さんはママに夢中な感じじゃないですか!だから私が帰っても大丈夫ですよね?!ママにメロメロって感じじゃないですかぁ?!」

 

私はうひひ~な顔でママに言った。

 

「えー?!そう?ゆきえちゃんもそう思う?そりゃそうやろー!みんな私にメロメロな人が来てはるんやからぁ!」

 

ママはふざけながら八尾さんの方へ顔を向けて、話に戻っていった。

 

私は帰るタイミングを見計らいながら、ママと八尾さんの話にときおり大げさな相槌を打っていた。

 

そんな態度を見かねたママが『もう帰ってええで』の目配せをしてくれた。

『すいません』のジェスチャーをした時、八尾さんがそれに気づいた。

 

「おぉ!そうか!もう閉店時間やもんなぁ。悪かったなぁ。ママもすまんな。」

 

しまった!

 

「なぁ~に言ってんのぉ~!八尾さんはまだまだ帰さへんからなぁー!」

 

「すいません!八尾さん!今日はちょっと帰らなきゃならなくて。ゆっくりママといちゃいちゃしてってください!またよろしくお願いします!ほんまにすいません!」

 

「おー!ええのか?ママ。」

「もちろんええに決まってるやろー!ゆきえちゃん、お疲れさまねー!」

「すいません!お先に失礼します!」

 

 

まだマキも先輩ホステスさんたちもみんな残っている。

そしてお店にはママが絶対離したくないと思っている上客がいる。

その上客の隣について、ママから『お願い』までされたのに私は先に帰るのだ。

待ち合わせはTさんなのに。

家に帰れば会える人なのに、Tさんが待ってることに気兼ねして私は上客を逃すかもしれないのだ。

ママからのお願いも無視したのだ。

 

Tさんとの待ち合わせの場所に向かいながら、私は少し後悔していた。

私に見向きもしなかった八尾さん。

どんな人なんだろう。

どんなにすごい仕事をしている人なんだろう。

もっと話してみたかった。

でも今日の私の態度ではきっと次はないだろう。

 

 

「ゆっきえさーん!こっちー!」

 

相変わらずのテンションのTさんが私を見つけて手を振る。

 

「待たせてごめんやで。」

「なぁ~に言うてんの!大丈夫やで!で?もうお客さん帰った?」

「まだ。Tさん待ってるから抜けてきちゃった。私一人だけ帰ったんやでー!」

「え?お客さんだれ?なんていう人?」

 

これまた相変わらずな知りたがり。

私はすこしうんざりしながら、でもそれを悟られないように答えた。

 

「○○建設の八尾さんっていう人。すごい上の人らしいでぇ。」

「え?○○建設ってWのとこやないか?八尾…あー!なんか聞いたことあるわぁ!」

 

よくご存じで。

 

「ゆきえさん!そんなすごい上客が来てるのに一人で帰ってきてくれたん?

俺の為に?ほんま?!」

「そやで。」

「んふ!んふふ!うれしーーーーっ!!ありがとう!」

 

すごく嬉しそうだ。

でも私はTさんが後々めんどくさいからという理由で早く来ただけだ。

ま、でもそれも『Tさんの為』といえばそうなのかもしれないし、ま、いいとするか。

 

「Tさんも今日はありがとね。由紀ママに会わせてくれて。」

「なぁ~に言ってんのぉ~!由紀な、ゆきえさんのことめっちゃ褒めとったでぇ~!」

「ほんま?ほんまにほんま?!」

「ほんまほんま!ええ子やーええ子やー言うとったでー!」

「あー!よかったぁ~…ほんまによかったぁ~…」

 

素直に嬉しかった。

由紀ママにそう言ってもらえただけでもほんとに良かったと思った。

 

「で?どうする?ゆきえさんはどうしたい?」

 

Tさんにはめずらしく真剣に聞いてきた。

 

「うーん…。もちろんクラブで働いてみたいし、由紀ママのお仕事っぷりも間近で見てみたい。けど…うーん…。どうしようかなぁ…。」

 

“今すぐ”ではないような気がしていた。

まだもう少し、りおママのお店にいたいような気がしていた。

まだあのお店でやり残したことがあるような気がしていた。

でもそれはただ“怖気づいている”だけなのかもしれない…とも感じていた。

 

「そっかー。まぁ急がんでもええしな。ゆきえさんがその気になればいつでも働けるし。ま、一回由紀とお茶でもしながら話したらええんちゃう?」

「うん…。そうやね。ありがとう。」

 

Tさんと和やかにお酒を飲み、緩く“これから”の話をしてお家に帰る。

 

Tさんはずっとご機嫌で優しい。

 

私は「望んだことが叶いそうだな…」と微かに思いながらお家でもビールを開けた。

 

望んだことが叶いそうになると少し怖気づく。

自分が望んでいたくせに、急に受け取るのが怖くなる。

人間ていうのはつくづく“変化”に弱いんだなぁと感じていた。

 

そして、今日の私の八尾さんへの対応、八尾さんの私への対応が、酔いと共によみがえってきた。

 

はぁ…。

 

もう八尾さんの席には呼ばれないかもしれないなぁ…。

もし席に呼ばれたとしても、隣には座れないだろうなぁ…。

 

お客さんからの反応が悪かった時は、だいたいこうやってくよくよと考えてしまう。

これはいつものことだった。

 

あの時こう言ってれば…

あの時こういう対応をしていれば…

次はどんな態度でいこうか…

 

一人でも反応が良くなかったお客さんがいると、いつもこうやって何度も何度も考えてしまう。

 

でも、今回の八尾さんのことはいつもよりもその感情が強い。

それに私の方から先に帰ってしまったのだ。

私は『後悔』を強く感じていた。

 

はぁ…。

 

私はTさんとの会話をなんとなくこなしながら、心の中で何度も溜息をついた。

 

八尾さんとのつながりはもうないな…。

考えてもしょうがない。

向こうもママ目当てで来てるんだし、もういいや。

あきらめよう。

 

そう決心がついたころ、私とTさんは眠気の限界がきていてお布団倒れこむように眠った。

 

 

 

それから数日後。

 

出勤して間もない時間にお店のTELが鳴った。

 

 

 

 

 

つーづーくー

 

人の見方はそれぞれ そしてそらさんはやっぱり『先生』だった話し

もうすっかり空気が秋だ。

 

今年の夏はいつ来たんだろうねぇ…。

 

私は夏を楽しみに生きている人間なのだ。

毎年『秋』というキーワードを聞くとさめざめと泣きたくなる。

 

もちろん『秋』の良さも『冬』の良さも『春』の良さも知っているつもりだ。

もう42年も生きていますからね。

 

でもでもでも!

 

私の中で『夏』はほんとにほんとにほんとーに!!特別なのだ。

 

なのに…

今年のこの有様…

 

はふぅ…

 

夏をまっったく満喫できないまま、なぜ私はこの『初秋』の切なさだけ味あわなきゃいけないのかっ!!

 

世の中は不条理だ。

まったくもって不条理だぁーーー!!

 

と、誰にもぶつけることのできないこのいたたまれなさをブログに書いてみたりする。

 

きっとここ数日続いているこの胸の締め付けや、泣いちゃうくらい不安定な気持ちも

そのせいだ!!と、いうことにしておこう。

(その話はもう少し自分の中で煮詰まったら書くことにしよう。)

 

 

それはさておき。

 

私は先日とある友人?知人?と少々バトった。

がっつりと膝をつき合わせて、ずっと言えなかったことを少々、ほんの少々、荒めな口調でぶちまけた。

(テメーふざけんなよ!いつまでも言い訳してんじゃねーよ!この拗ね野郎!!……

なんてーコトは言って…ません…たぶん。てへ。)

 

まぁお互いだいたい言いたい事を言い合えたんじゃないかと思っていて、概ね良い時間が過ごせたんじゃ…ない…かと。

 

で、だんだん場も和み、なんとなくお互いの近況話しみたいになった。

 

そのとき、その知人?友人?はこんなことを言った。

 

「あのさ、これはずーっと言おうかどうしようか迷ってたことなんだけど…」

 

これはこの知人の話し始めの癖のような言葉だ。

 

 

「うん。なに?」

 

そう言われたらこう応えるしかない。

 

「幼稚園にお迎えに行くとね、そらちゃんがいつもボーっとしてるんだよね。

他の先生やお友達が話してるのに、ボーっと空を見上げてたりしてさぁ…。」

 

彼女の息子は同じ幼稚園に通っている。

なのでそらさんに会う機会もちょこちょこある。

 

「うん。それで?」

 

私はなんだか嫌な予感がし始めていた。

 

「私が目の前に行って『そらちゃーん!!』って手を振ってもなかなか気が付かなくてさぁ…。」

 

「うん。で?」

 

「あ!別に大丈夫だと思ったんだけどね!何度もそんなシーン見ちゃったから…

これはゆっきぃに言った方がいいっていうサインなのかと思って…。だから言っておくね。」

 

は?

 

えーと…

 

「え?で、なんなのかな?」

 

「いや、ほら、そらちゃんいつもいい子じゃない?聞き分けもいいし…

でもそうやってボーっとしてる時間が結構あるってことはさ…中学生くらいになったら、まぁ、なんというか、それなりの時期がきちゃうんじゃないかと思って…。

て、勝手に心配しちゃってるだけなんだけど。」

 

 

私はその知人の話を聞いて『うーん…』と思った。

お前に心配してもらわなくてもいいし!とも思った。

で、こう答えた。

 

「うーん…。まぁ確かにそらさんはよくボーっとするし、すんごくのんびり屋だし、でも心配になっちゃうくらい気ぃ使いのとこもあるしねぇ。

まぁでも中学くらいで○○(←知人の名前)の心配してるようなことになったとしても別に大丈夫でしょ。てかさ、今そんなこと考えても仕方ないし。大丈夫よ。あの子は。と、私は思うよ。」

 

そらさんはほんとによくボーっとしている。

きっと宇宙に行っているんだと思う。笑

そして、かなり人に気をつかうほうだと思うし、かなりいい子だ。

6歳児にしてはほんとに心配になっちゃうくらいいい子だと思う。

そしてそれは今に始まったわけではなく、赤ちゃんの時からすごく安定感のあるいい子だ。

なので、この知人のような言葉をいろんな場面で私は何度も聞いた。

 

「そらちゃんは反抗期とかきそうだよねぇ…。見てるといい子すぎて心配で…。」

 

そんな言葉だ。

 

なので知人の言ってることもよくわかる。

 

でも…

なんでわざわざそんなことを言うのだろう?と疑問に感じる。

そして『ほんとに心配してる?』と懐疑的になる。

 

私はそんなこと心配もしてないし、そらさんはそういうヤツなんだという認識をいつもしている。

 

しかしその知人は私がそう答えると

 

「うんうん!私もそらちゃんは大丈夫だと思ってるし、ゆっきぃ達ならそう言うと思ってたよ!」

 

と、不自然な笑顔でそう言い、その後をこう続けた。

 

「でもさ!何度も何度もそんな場面見ちゃって心配になっちゃってさ…ごめんね!」

 

 

その知人とは2~3時間ほど話して別れた。

 

私はそのあとやたらモヤモヤとした。

 

そして『そんな場面を何度も何度も見た』という知人の言葉がやたらと気になってきた。

 

「ちょっとは心配した方がいいのかな…自分の娘のことだもんな…」

 

そんな思いがフツフツと湧いてきたのだ。

 

 

そらさんを幼稚園に迎えに行き、自転車の後ろに乗せる。

 

「ママー!あのね、今日ねー!」

 

そらさんは私のフツフツな思いなんか全く関係なく元気だ。

自転車の後ろの席で、一生懸命今日あった出来事を私に話してくれている。

 

私は「うん!うん!そーなんだー!すごいじゃん!」と楽しくその話を聞く。

 

でも、私の中のフツフツは消えない。

 

そんな時は本人に聞いてみるしかない。

 

そらさんの話がひと段落ついたところで私は割と真剣な声でこう言った。

 

「あのさーそらちゃん。ママ、そらちゃんに聞きたいことあるんだ。」

 

「え?なに?もしかして今日のゴハンのことぉ?そらちゃんにはわかんないからねーだ♪」

 

ぷぷ。

いつもどおり、めっちゃふざけた声でかえしてきた。

 

「違うよー!お家帰ったらちゃんと聞きたいんだ。いいですかぁ?

ちゃんと答えてほしいんですけどぉ。いい?」

 

「えー?なんだろ?別にいいけどさー」

 

お家に着き、荷物を片づけているとそらさんがもう遊びはじめている。

私が真剣な声で『聞きたい事がある』なんて言ったことはすっかり忘れている様子だ。

 

「そらちゃーん!ちょっといいですかー?!」

「え?なに?」

「さっきさ、ママが聞きたいことあるって言ったでしょ?今いいですか?」

「えー?あ!そうだったね!忘れてたよー!あははは!」

「そーだと思ったー!あははは!」

 

全くもってふざけている。ウケる。

さて。

聞いてみるか。

 

「あのね、今日ママね○○とずっとお話ししてたんだけどさぁ。」

「え?○○さんと?いーなぁ、そらちゃんもお話ししたかったよぉ。」

 

なんていい子なんだ。

 

「そっか。じゃ、今度会ったらそう言ってあげて。喜ぶよぉ。

でさ、○○がね、幼稚園に迎えに行くと必ずボーっとしてるそらちゃんのことを見るっていうのね。それで、あまりにもいつもボーっとしてるところばっかり見るからそらちゃんのことが心配になっちゃたんだって。

そらちゃんの目の前で『おーい!』って手を振っても中々気づかない時もあったんだって。だから心配だって言うのよ。そらちゃん、そうなの?」

 

そらさんは私にそう言われたあと、しばらく天井を見つめ、間をおいてからこう言った。

 

「え?そらちゃんが?そんなことしてたの?」

 

その後もすごく真剣な顔で何かを考えているようだった。

私はそらさんを傷つけてしまったんじゃないかと少し心配した。

 

「うん。そうなんだって。だからさなんかママも心配したほうがいいのかなー?って思っちゃって今聞いてるんだけどさー」

 

「した方がいいのかなー?ってなんじゃい?!」

 

そらさんは最近ツッコミが素晴らしい。

 

私はここでこんなツッコミがくるとは思わず笑ってしまった。

 

「あはははは!なんかさー、いつも心配なんかしてないのに○○が何度も心配だー心配だーっていうもんだからさー。ママもした方がいいのかなーなんて思っちゃったんだよねーあははは!」

 

「うーんとさ、そらちゃんボーっとしてるかどうかなんてわかんないし!ていうかすぐ忘れちゃうし!それにぃー、○○さんは心配してるかもしんないけどー

こんなに元気だよ!!(*´з`)毎日元気だよ!!(*´з`)」

 

ぶふっ!!

 

そらさんは変顔で私にこう答えた。

 

「そーだよねー!そりゃ忘れちゃうよねー!それに元気だし楽しそうだもんねー!

あーよかった!ママもさ、ほんとは心配なんかしたくないのに『もしかして心配しなきゃいけないのかなぁ』なんて思っちゃってさー!だから心配してみた!」

 

「ほんとは心配したくないのかよっ!!」

 

そらさんツッコミ。

 

「あははは!そーだよー!だって心配する必要ないじゃんねー」

 

そらさんがまた少し天井に目を向ける。

 

少し、ほんの少しの間。

 

で、

 

「ママ、したくないことはしない方がいいんだよ。したいことだけを自由にすればいいんだよ!」

 

のお言葉。

 

うひょー!!

 

「うんうん!そーだよねー!ママがバカでした!そらちゃんはすごいなぁー!

ママ、したいことするからさ、そらちゃんも自分がしたいことしてね!自由にね!」

 

と、少しだけママっぽい?こと言ってみた。

 

で、お返事はこうでした。

 

「そらちゃんはいつも自分がしたいようにやってますぅ~♪(*´з`)」

 

はい。

降参。

 

 

そらちゃんはよくボーっとしてる。

それは事実だ。

 

でもそれをみた人がどういうストーリーをくっつけるかはその人次第だ。

 

今回のこのことはなんだかすごくいろんなコトに当てはまるような気がした。

 

私の知人はただボーっとしているそらさんを見て

 

『あれはおかしい。いつも気を使いすぎているんじゃないか?いつもいい子でいようとするから疲れてしまってるんじゃないか?そんなに頑張ってたらそのうち大変なことになんじゃないか?中学生くらいでポキッと折れてしまうんじゃないか?』

 

的なことをきっと当てはめたんじゃないかと思う。

そんなことを言っていたし。

 

そらさんがボーっとしてるとき、ほんとはどんな状態なのかはそらさんしかわからない。

もしかしたらその知人がくっつけたストーリーが合っている部分もあるのかもしれない。

でも、それがわかるのはそらさんだけだ。

そしてそのそらさんが『元気だよ!!』と明るく言っている。

 

目で見てわかる事実は『そらさんはよくボーっとしてる』だけ。

 

そこに何を思うか、どう見るか。

 

それはほんとに人それぞれで、そしてその見方が今のその人の心を表しているんじゃないか、と思う。

 

『事実だけを、現象だけを、素直にありのままに見る。』

 

これはとてつもなく難しいことなんだなぁとつくづく思う。

 

そして、

 

そらさんはやっぱり『先生』だなぁとつくづく思ったのだった。

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↑自分のお化粧セットでお化粧をしたそら先生。

コンセプトは『昭和のキャバレーホステス』だ。

実に素晴らしい。

 

 

 

 

 

私のコト 81

8月が終わってしまった…

私が大好きな8月が…

 

気候がすっかり秋だよー泣

 

今日も私は自叙伝を書きます。

 

続きいきましょー!

 

前回はこちら↓

私のコト 80 - 藤山家においでよ

 

 

由紀ママとの対面を無事果たし、ホッとしながらりおママと一緒にお見送りをしていた

小娘ゆっきぃ。

突然りおママに『お店…辞める気やないの…?』と聞かれ、一瞬顔がひきつる。

 

 

 

二人とも由紀ママとTさんが歩いて行った方に顔を向けながら、お見送りの表情を崩さず会話をする。

 

「ゆきえちゃん?違うやんなぁ?!あははは!」

 

りおママはさっきの真剣な口調とはうって変わった、ふざけた口調で私に言った。

 

「ママー、何言うてるんですかぁ?そんなはずないやないですかぁ。それに、クラブLですよ?由紀ママが私を雇うと思います?もー!あはははは!

ママが自分で由紀ママをよんでってTさんに言ってたくせにぃ~!」

 

「ごめんやでー!あははは!」

 

 

また私は嘘をついてしまった。

でも今はこう言っておいた方がいい。

まだ何も決まってないのだから。

 

ふざけてこの場を収められたと思った。

でもりおママはなんとなく納得してないような態度だった。

 

「ゆきえちゃん。あんなぁ…」

 

りおママがまた急に真剣な口調にもどる。

 

「はい。なんでしょう?」

 

何を言われるかまた緊張がはしる。

 

「…最近一緒にゴハン食べたりしてへんやん?ゆきえちゃんもマキちゃんもアフターで忙しいしな。今度ゆっくりゴハンでも食べへん?」

 

やっぱり納得いってないんだ。

きっとりおママは不安なんだ。

 

「はい!いーですねぇー。行きましょう行きましょう!ほんまですねー。ずっとりおママと一緒に飲んだりしてないですもんねー!楽しみやなー♪」

 

こんな対応もすっかり慣れてしまっていた。

心の中で思っていることと口から出る言葉がまるで違う。

そんな毎日だ。

 

りおママとふざけてしゃべりながらお店に戻る。

 

私はやっと緊張する時間から解放されて、普通に接客ができるようになった。

 

マキが私に近づいてきて小声で話をする。

 

「ゆきえさん。さっきの方が由紀ママですよね?どうでした?」

 

マキには事前にTELで少しだけ今日の経緯を話していた。

 

「うん。またゆっくり聞いてや。今日の帰りは多分Tさんが待ってるから、また明日にでもTELするわ。」

 

「はい!木田さんとのことも聞きたいし!待ってますね♪」

「マキ。いつもありがとうね。ほんまに感謝やわぁ。」

「何言うてるんですか!私、ゆきえさんに憧れてるんです!応援してます!」

 

マキのこの言葉に一瞬で泣きそうになる。

 

今嘘をつかずに本音で話せるのはマキだけだ。

それにあんな過去の話しをしたにも関わらず『憧れてる』なんて言ってくれて…

 

「ゆきえちゃん!マキちゃん!こっちの席着いてやぁ!」

 

ママが呼ぶ声でハッとして涙をこらえる。

 

「はぁーい!」

 

マキと二人、お客さんの席ににこやかに向かう。

 

 

なかなかに忙しい一日だった。

お客さんの数も多く、割とお酒も飲んだ。

 

あと30分で閉店という時間にお店のTELが鳴った。

 

「ゆきえちゃーん!電話きてるでー!」

 

ボーイさんが私をよぶ。

きっとTさんだ。

 

「はーい!もしもし?」

「あ!ゆきえさん?俺俺!」

 

やっぱり。

 

「うん。どこ?」

「もうすぐお店終わりやろ?アフター入った?」

「ううん。今日は入れへんかった。Tさんから連絡くると思ったし。」

「さっすがゆきえさん!あのあとの由紀との話も伝えたいし、終わったら『S』っていう店に来てくれる?待ってるから。」

「うん。わかった。少し遅れるかもやけど…」

「ええよ!ゆきえさんが来るの待ってるから!じゃーね♪」

 

Tさんはすこぶる上機嫌だ。

どんな話が聞けるだろう。

 

TELを切り、また接客に戻る。

席に着いていたお客さんがそろそろ帰りそうだ。

今日は割と早く上がれるかもしれない。

 

そう思っていた時、またお店のTELが鳴る。

 

「ママー!TEL入ってますー!」

「はーい!」

 

ママがTELに出る。

席に着いていたお客さんが帰る支度を始める。

 

「ええーー?!八尾さん?!もーー!!久しぶりやないのぉーー!!全然来てくれへんねんもん!どないしてたん?!いやぁ~!ほんま久しぶりやぁー!

え?今日?今から?来てくれはるの?嬉しいわーー!待ってるで!え?7人?

全然大丈夫やで!ほな待ってる!待ってるで!」

 

ママの声がお店に大きく響く。

 

これから?

7人?

どうしよう…

帰れるのかな…?

 

席に着いていたお客さんをお見送りに行く。

 

「ありがとうございましたー!」

 

ママの機嫌がとてもいい。

すごく嬉しそうだ。

 

「ゆきえちゃん!まだちょっといてほしいねん。だいじょうぶ?

閉店時間少し過ぎるまでちょっといてほしいねん!」

 

ママはすごい笑顔で嬉しそうにお願いしてきた。

 

「はぁ…。でも今日はほんまに少ししかいられないんですけど…。

どうしたんですか?」

「もうな、すんごい久しぶりなお客さんが今から来るねん!これがすごい大事なお客さんやねんって!ゆきえちゃんのこと紹介したいねん!頼むわぁー」

 

私のことを紹介したい…

大事なお客さんだから気に入られて引っ張ってほしいという意味だ。

 

「そうなんですね。わかりました。少しだけなら…。そんなにすごい方なんですか?」

「ありがとう!そやねん!また来たら説明するわー!あっ!いらっしゃった!」

 

ドアの開く音がする。

 

「おおーー!ひっさしぶりやなーー!!」

 

スーツを着た、背の高い存在感のある男性が入ってきた。

その後からぞろぞろと数人スーツ姿の男性が店内に入ってくる。

 

「いらっしゃーい!!待ってたでーー♪」

 

ママは今まで見た中で一番の笑顔なんじゃないか?と思うような笑顔で出迎えた。

 

そんなに上客なんだろうか?

 

「ゆきえちゃん!ほら!お席に着いて!」

 

ママに言われ、他のホステスさんたちと一緒に慌ただしく席の準備やお酒の準備を

していた手を止め、メインであろうお客さんの隣の席に着いた。

 

「ゆきえちゃん!この方は八尾さん!すごい人なんやでぇ~!」

 

ママが自慢げに笑顔でそう言った。

 

「ゆきえです!初めまして!失礼します!」

 

「ママ~。何を言うてんねん。またまた。

おぉー!ゆきえちゃんね。八尾ですぅ。宜しくなぁ。」

 

八尾さんは私の方をほとんど見ず、でもにこやかにそう言った。

 

こりゃ私が引っ張れる相手じゃなさそうだなぁ…

 

私はなんとなくそう感じていた。

 

 

 

 

さて。

八尾さんは一体何者?

この後のTさんとの話は?

由紀ママとはどうなる?

 

 

つーづーくー

 

梅仕事と私と雅子のダンス

先週の火曜日。

 

やっと梅を干すことができた。

 

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5月の後半に梅酒と梅ジュースを漬け、梅干しの仕込みもした。

 

梅干しを作るのは生まれて初めてのこと。

 

一つ一つ丁寧に梅を焼酎で綺麗に拭き、梅のお尻にちょこんとついているヘタを

これまた一つ一つ丁寧に梅に傷をつけないように取り除く。

(亮一さんも手伝ってくれたの♡)

 

お塩のパーセンテージを決め(13パーセントにしてみた)、近所に住んでいる梅干し作り名人のおばさんに聞いていたようにお砂糖をほんのひとつまみ用意した。

 

梅とお塩とお砂糖ひとつまみを丁寧に重ねながら樽に入れていく。

 

梅酢が上がってくる2日間は気が気じゃなかった。

ここで梅酢がうまく上がってきてくれないとカビがはえやすくなるから。

 

ちゃんと梅酢が上がってきてくれてるのを見て、ほんとにホッとした。

 

梅雨明けを待ち、晴れが続きそうな日を選んで3日3晩外に干す。

 

近所の梅干し名人のおばさんが『この3日間は毎日ひやひやするのよー雨が降ったら大変だからねー!』と会う度に言っていた。

 

干してある梅に雨があたってしまったらどうなるんだろう?と思いながらも

何故か聞いていない。

というか、未だに知らない。笑

 

でも、何か大変なことになるんだろうなぁくらいは感じていた。

 

梅雨があけてから、今年は雨や曇りが続いた。

 

「いつになったら梅が干せるんだーー!」

 

何回亮一さんに言ったかわからん。

 

そんなこんなで先週。

 

やっと干すことができたのだ。

 

3日3晩、雨に降られることなく、無事に、そして綺麗に。

 

 

『梅仕事』

 

私はこの言葉の響きが好きだ。

 

「あぁ~…なんかいいなぁ~…」とじんわりする。

 

 

 

その『梅仕事』の前の週。

 

私は雅子という友人のダンスの発表会に足を運んでいた。

 

雅子とはもう10年弱の付き合いになる。

“友人”と書いたが、元々は私が店長をやっていたリラクゼーションサロンのスタッフだった。(雅子は今もそこのサロンの人気セラピストです。)

 

その時の私の状況は、初めての店長業、そのお店は新店舗、集まってきたスタッフたちはみんな“ド”素人たち(未経験者)ばかり。

 

その“ド”素人スタッフの技術(整体、リフレクソロジー、アロマトリートメント全て!)を教えていかなければならず、接客も教えていかなければならず、店のルールも作っていかなければならず…

 

それをほぼ一人でこなさなければいけない状況。

 

もうカオスだった。

 

そんな中、雅子だけはその新店舗配属の3か月前?から他の店舗で経験していた唯一のスタッフだった。

 

お店が始まるまで私の中では頼りにしまくりだった。

 

が…

 

いざお店がオープンしてみると、一見頼りになりそうな見た目とは裏腹な奴だった。

 

いつもおどおどビクビクしている。

『え…私には無理ですよ…』とかすぐ言う。

恐そうなお客さんが来るとビクついて私に『…担当変わってもらえませんか?…』

とかも言う。(私は絶対変わらない。笑)

 

当時の私はどのスタッフに対してももんのすごく真剣で、絶対に色んなことが出来るようにしてみせる!!とか、みんなの本質を表にどんどん出していってもらうんだ!!とかをかなり熱く思っていた。(と思う。)

 

ゆえにすんごく厳しい言い方を色々していた。(らしい。)

 

雅子はいつも何かにビクついて、すごく声も小さい女だった。

そして、いつもいい子ちゃんだった。

周りのスタッフにはとても好かれていて、そして未経験のスタッフから頼りにされてたりした。見た目のせいと年のせいと少しの経験があったから。

(あ、雅子は私より年上なんですけどね。私はとても失礼な奴なので年齢は気にしません。)

 

いつもビクついて、自信なさげなくせに、周りの反応に一生懸命合わせようとしていた。

年上で少しだけ経験があって見た目も柔らかい母性を感じさせるような女性だから。

一生懸命人の悩みを聞いたり、一緒に考えたりしてあげてたけど、私にはその行為はとても不自然にみえた。

 

絶対に雅子はそんな奴じゃない!ってことがわかっていたからだ。

 

雅子の本質はそんなんじゃない!と根拠がない自信満々でそう感じていた。

 

「あのさ、雅子はほんとはそんなんじゃないっしょ?なにビクついてんの?

そんでなんでそんなに周りの反応に自分を合わせようとしてんの?

あのさー、雅子ほんとはもっとふてぶてしくてもっとブラックな面あるでしょ?」

 

私は多分こんなことを言っていたと思う。

 

「ブラックな面があるって指摘されたの初めてです。そうなんです。私、ほんとは悪いやつなんです!」

 

そんなことを言いながら、雅子は私としゃべってるときによく泣いたりしていた。

 

私が感じていた雅子の本質は、無邪気で素直でふてぶてしくて(いい意味でね)

人の世話なんか焼いてられないほど、自分がやりたい!と思ったことにどんどんと取り組んでいってしまうような奴だった。

 

私が店長をしていた期間は3年間だけ。

そらさんを妊娠して、辞めた。

 

その3年間はとても濃密で、雅子とも他のスタッフともとても濃い時間を過ごした。

 

お店の売り上げを上げよう!どうやったらお店の売り上げがあがるか?

どういう宣伝をしたらお客さんがたくさん来てくれるか?

どんなサービスを提供したら新規のお客さんが来てくれるか?

 

なんてコトを…

 

…ちっとも考えなかった。

 

どうすればお店の娘たちが楽しく働けるか?

どの技術を身に着けてもらおうか?

お店の娘一人一人の長所を生かすにはどうしたらいいか?

スタッフがお互いを認め合えるようにするには何を提案していけばいいか?

 

とにかくお店の娘たちが、切磋琢磨しつつも、お互いを尊重し、みんなが居心地が良い店を作ることをずーっと考えていた。

 

なので、必然的にスタッフ一人一人と話す時間が長くなる。

話しの内容もどんどん深くなる。

 

心の闇を話して泣く子もたくさんいた。

 

そして、雅子もどんどんと私に話をしてくれて、どんどんと何かが解放されていくように感じた。

 

私がお店を辞めてからもその当時のスタッフとの関係は続いている。ありがたい。

 

雅子ともちょくちょく会ってはまた泣いたり(雅子がね)、たくさん話をしたり、家にゴハンを食べに来てくれたり。

そんな感じで付き合いは続いていた。

 

今現在。

雅子は出会った当時とはまるで変わった。

 

素敵な人と結婚もして、当時悩みに悩んでいた家族との関係性も前よりはかなり良好になった。

 

なかなか子供に恵まれず、ほんとにしんどい期間もあったけれど、いろんなことを吹っ切っていった。

 

「子供ができれば“幸せ”だって思ってたところがあったみたいです。」

 

彼女はいつの間にか『“幸せ”は自分の“外側”にはない』ということに気付いていたのだ。

 

そんな雅子が、昔ずーっと続けていて、でも辞めてしまっていたダンスを再開した。

 

「自分がやりたい!と思ったこと、やってみようって思って!」

 

生き生きとした笑顔でそういう彼女。

痩せてスッキリとした。

そして無邪気な子供のような表情。

 

すごく嬉しかった。

 

そんな雅子が最近一緒に飲んだ時に、恥ずかしそうにこんなことを言った。

 

「あのぉ…ダンスの発表会が今度あるんです。えっと…もし、もしも暇で、もしも行ってもいいかなぁ~と思ったら来てください。(*ノωノ)」

 

私はすぐに

 

「おー!行こっかなー」

 

と応えていた。

 

 

発表会当日。

 

武蔵小杉の駅からすぐの会館が会場だ。

 

が。

 

何を勘違いしたのか、私は『元住吉』の駅に降り立った。

なんの疑いもなく。

 

その会館までの道のりを経路検索すると『徒歩17分』とでた。

 

「割と遠いんだなぁ…」

 

と呟きながら会館を目指す。

 

会館までの17分。

歩きながら雅子のことを考える。

 

だいぶ変わったなぁ…。

あいつ、だいぶ変わったよなぁ…。

今日、どんな雅子が見られるか楽しみだなぁ。

 

そんなことを考えながら歩いていたその時。

 

あっ!!

そーかっ!!

 

私の目が急に大きくなる。

 

はぁ~…

そうだったのか…

 

すごく腑に落ちる言葉が浮かんだ。

 

 

『人は“変わる”じゃなくて“元に戻る”んだ。』

 

雅子は『変わった』んじゃなく、元の雅子に『戻った』んだ。

 

いろんなワクや観念や刷り込みや…もう不必要になったものをひっぺがして、放り投げて、手放して、、、

 

シンプルな『もともとの雅子』に戻ったんだ。

 

あー…

 

きっとみんなそうなんだ…

 

「そっか…そうだよねぇ…そうだそうだ…」

 

一人ブツブツと呟きながら歩く。私。は、怪しい。

 

会場に着き、先に来ていた友人とお話しする。

 

「楽しみだねー!」

 

いよいよ雅子の出番だ。

雅子のダンスをみるのはこれ初めて。

 

一曲目。

想像以上に上手い!!

恰好良い!!

すごく存在感がある!!

 

そんな感想。

 

「雅子すごいかっこいいねー!うまいねー!」

 

友人とそんな会話。

 

二曲目。

 気付いたら…

 

号泣

 

雅子が踊っている最中、後から後から涙がでてくる。

もう自分でもびっくりなくらい。

 

まったく泣くなんて予想もしてなかった。

 

舞台に立っている雅子は、堂々としていて、とても、ほんとにとても楽しそうで、

ありきたりな言葉だけれどもキラキラしていて、そしてとっても無邪気だった。

 

ふと斜め後ろの席を見ると、雅子の旦那さん、お母さん、お姉さん、姪っ子さんが並んで座って雅子の姿をジッと見ていた。

 

その光景にも涙が止まらなくなった。

 

号泣しながら見た雅子のダンスが終わり、隣の友人に目をやる。

 

ぶっ!!

 

隣でも号泣だった。笑

 

 

 

梅を丁寧に扱う。

梅酒を漬ける。

梅ジュースを漬ける。

梅干しを作る。

 

『梅仕事』は丁寧さが大事だ。

そして出来上がるまで『待つ』ものだ。

 

私は過去ひどい摂食障害で、毎日が地獄のようだった。

 

部屋の片付けもできないし、一人じゃまともにゴハンも食べられない。

頭の中はいつも忙しく、不安や絶望でいっぱいだった。

 

人を信じることもできず、自分のことが大嫌い。

いっそ死んでしまおうか?と思ったことが何度もある。

 

そんな過去がある私が梅干しを作った。

 

『梅仕事』を楽しくしている自分。

 

「…考えられないなぁ。」

 

梅を丁寧に干しながら、何度もそう言っていた。

 

 

私はもう不必要になったあらゆることをどんどんと捨て去り、剥ぎ取り(これめっちゃ痛い笑)、手放し、執着をあきらめ、悶絶しながらも思い込みをやめ、掴めるものなんてなにもないことを知り、、、

 

 

 

元に戻っていっている。

 

 

 

 

 

 

 

長くなっちゃった。

 

読んでくださってありがとう。

 

 

 

 

私のコト 80

おおっ!!

 

もう80回目です!!

 

いーつーまーでー

 

…続くんですかね。

 

読んでくださってるみなさん。

 

ほんとにほんとにありがとうございます!!

少しでも楽しんで頂けてたら本望です!!

 

ではさっそく続きです!

 

前回はこちら↓

私のコト 79 - 藤山家においでよ

 

 

 

りおママの店に、ミナミでも老舗の超有名高級クラブのママ『由紀ママ』を連れてくると迎えに行ったTさん。

りおママに『絶対に味方につけておいたほうが良い相手だ。』と言われ、ますます緊張が増す小娘ゆっきぃ。

Tさんを待ってる時間にもほかのお客さんの接客はもちろんしなくてはならず、上の空でお客さんの席に着く。

 

長い。

 

待ってる時間がやたらと長く感じる。

 

りおママは「“こっち”のバックもたくさんついてるから…」と人差し指でほっぺに傷をつける仕草をした。

 

昔からミナミでクラブを構えているんだから、それは当然のことだと思う。

 

私はりおママのその仕草を見ても、話を聞いても、特に“恐れ”は感じていなかった。

 

滋賀県雄琴でしていた仕事はそんな話がしょっちゅうあったし、もっと露骨につながりのある世界にいたのだから。

 

私がこんなに緊張していて、“恐れて”いるのは…

 

『貴女は高級クラブで務められる人ではない』

『貴女はそんな器量ではない』

『貴女みたいな人は高級クラブでは受け入れられない』

 

と言われてしまうんじゃないか。という『恐れ』だ。

 

綺麗でもない、スタイルが良いわけでもない。

そんな私が受け入れられるのか?

 

受け入れられなかったら

「やっぱり私はそういう程度の人間だったんだ…」

と、すごく絶望するのだろう。

 

そして「やりたい!」と思っているコトが叶わないということが

ほんとに『ある』んだということを思い知るのだ。

 

それが一番恐いんだ。

 

でも…

 

一方で、いつもこういう時に感じる感情がまた湧いてくる。

 

とことんまで『絶望』するのもいいかも…と。

 

受け入れられたらそりゃ嬉しいだろう。

そしてそれを望んでる。

 

でも…

 

受け入れられなかったら『私』は実際どんな感情が湧くだろう?

どこが痛くなるんだろう?

どれだけ悔しがるんだろう?

 

そんな、自分への好奇心みたいなものも同時に生まれてくる。

 

 

そんなことを思いながら上の空で接客をしている時、店のドアが開いた。

 

「いらっしゃいませ。」

 

りおママが立ち上がり、満面の笑みを浮かべた。

 

「いらっしゃいませ。」

 

りおママについで、そう言いながらドアの方を振り返る。

 

 

「おー!連れてきたでー。」

 

大きな声でそう言いながらお店に入ってきたTさんの後ろに

一人の女性の姿。

 

「あらぁ~あ!!由紀ママぁ~!お忙しいとこほんまにすいません~!!」

 

りおママがいつもよりワントーン高い声で挨拶をしている。

 

…あれが由紀ママか…

 

ドキドキしながら由紀ママの方をジッと見た。

 

白いシャツに真っ赤な上下のスーツ。

ひざ丈のタイトスカート。

ジャケットの襟を適度に立てている。

髪は綺麗にまとめて、お化粧は上品にしている。

年の頃は…

多分50代後半かもしくは60代、もしかしたら60代半ば以降なのかもしれない。

パッチリとした目元。

若いころはアイドルの様な顔だったんだろうなぁと思わせる、可愛らしい顔だちだ。

 

そして

 

なんだかすごく存在感のある女性だ。

 

「りおちゃん。お店になかなかこられなくてごめんやで。

ええ店やないの。おめでとうな。」

 

ハスキーな落ち着いた声で由紀ママは言った。

 

「いやぁ~!!由紀ママにいらしてもらえるなんて!ほんまにありがとうございます!!お忙しいでしょうけどちょっと飲んで行ってくださいねぇ!!」

 

りおママはずっと声が上ずっていた。

ものすごく緊張しているのがわかる。

 

「ゆきえさん呼んでやー。」

 

Tさんがりおママに言っている声が聞こえる。

 

ドキドキドキ…

 

ボーイさんが私を呼びにくる。

 

「すいません。失礼しますねー。また呼んでくださーい!」

 

席に着いていたお客さんにご挨拶をして、コップに入っていた水割りをグイッと飲み干す。

 

いよいよだ。

 

由紀ママのいる席にゆっくりと近づく。

 

「失礼します。いらっしゃいませ。ゆきえです。」

 

なるべく落ち着いた態度でにこやかに…出来た…はず。

 

「おー!ゆきえさーん!待ってたでー!こっち由紀ママ。

由紀ママ!こちらゆきえさん。」

 

Tさんはハイテンションで紹介してくれた。

 

「はじめまして。よろしくお願いいたします。」

 

由紀ママは扇子で自分を仰ぎながら私をジッと見た。

 

ドキドキドキ…

 

ほんの数秒のことなのにすごく時間が長く感じられた。

 

「この子がゆきえちゃん?はじめまして。Tちゃんからいっつも話し聞いてたわぁ。」

「はい!ゆきえです。そうなんですか?どんな話ししてたんですかねぇ。Tさん!悪口言ってたんやないんですかぁ?」

「わはははは!俺がゆきえさんの悪口言うわけないやろー!」

「どうやろなぁー?!いつも悪口言うやないですかぁーあははは!」

 

どういう態度をしたらいいのかわからなくて、いつも通りふざけてみるしかなかった。

 

「なぁ?りお!俺はゆきえさんの悪口なんて言ったことないやんな?」

 

Tさんがりおママに振った。

 

「そーやでぇー!!由紀ママ、聞いてくださいよ!Tちゃんってばいっつも

『ゆきえさんゆきえさん』言うて!こんなんちゃいましたよねぇー?」

 

「んふふふ。そやなぁ。私にもゆきえちゃんの話しよくしてくるわ。

ええ子やねんでっていつも言うてるで。ゆきえちゃん。」

 

「えー!ほんまですか?そんなことも言えるんですねぇー!Tさんったら!」

「なんやそれは!俺はいっつもゆきえさんを褒めとるんやでー!」

「へー!ありがとーござーますー♪」

「わはははは!」

「あはははは!」

 

なんだかいつものふざけあいっこになってる…

こんなんで大丈夫なんだろうか…

 

「でもねー、ゆきえちゃんがほんまに頑張ってくれてるんですよぉ。

いつも私のこと助けてくれてるんです。ゆきえちゃんが来てくれなかったら

お店大変なことになってたと思うんやわぁ。」

 

りおママが急にしみじみとそんなことを言い始めた。

 

「そやろ?!りおはもうトウが立ちすぎてるからなぁ!ゆきえさんみたいな若い子がおらんとな!!わはははは!」

 

りおママがせっかく私のことを褒めてくれてるのに!

Tさんがまたチャチャを入れた。

 

「なんやのぉ~?!せっかくエエ話ししてるのに!由紀ママ~どう思いますぅ?」

「んふふふふ。」

 

由紀ママは扇子で口元を隠して上品に笑っていた。

 

「もうりおはええわ!もう違う席いけやー!もう若いゆきえちゃんだけでええから!はよ行って!他のお客さんのとこ行かなきゃ変やろ?」

 

Tさんがふざけながらりおママを席から外そうとしている。

私と由紀ママと三人で話したいんだ。

 

「なんやのぉ~?!あーそーですか!わかりましたよぉ~!

由紀ママ。ほんまにありがとうございます。よかったらゆっくりしていってくださいね。」

 

りおママがきっちりと挨拶をしている。

 

「りおちゃん。忙しいのにありがとね。がんばってや。」

 

由紀ママも落ち着いたトーンで労いの言葉をかける。

 

ママ同士上辺だけの言葉かもしれない。

でも、そこには何か『ママ同士』にしか出せない空気感のようなものがあり、私はその光景をみて少しゾクゾクした。

 

「さて!りおもいなくなったことだし!ゆっくり話そうやー!」

 

もうあまり緊張していない。

由紀ママが私をどう見ようが、私はこのままで正直にいこうと思っていた。

そして、そんな私を由紀ママはきっとほほえましく見てくれるんじゃないか?となんとなく感じていた。

クラブで働けるかどうかは別として。

 

「ゆきえちゃん。このお店はどうなん?」

 

由紀ママがいきなり質問してきた。

 

「はい。りおママにとても良くして頂いてます。お客さんにも可愛がって頂いていて、とても居心地がいいです。」

 

「ふーん…そうやのぉ…。で?クラブでも働いてみたいの?」

 

由紀ママは少し上目遣いで私をみながらそう言った。

私のことをじっくり見てる目だ。

 

「はぁ…い。えっと…そうですね。正直私なんかが務まるのかなぁという思いはあります。でも、高級クラブというところがどんなところなのか、そこで働くってことはどういうことなのか、知りたくてたまらないんです。

どんな素敵な女性が働いてらっしゃるのか、どんなお客様がいらっしゃるのか。

そして私が高級クラブで働くことができたらどれだけお店に貢献できるのか、

そんなことが知りたくてしょうがないんです。」

 

…こんなに正直に話してしまっていいのだろうか?…

 

言い終わってからすぐにそんな思いにかられた。

 

もっと『月に○百万稼ぎたいんです!』とか、『ナンバーワンホステスになりたいんです!』とか『ミナミで一番になりたいんです!』とか、

 

そんな答えの方がよかったんじゃないだろうか…

 

さっきの私の答えじゃ、全くやる気が感じられないじゃないかーー!!

 

少し『やっちまった感』を感じていたその時。

 

 

「そう。Tちゃん。エエ子やないの。」

 

由紀ママがTさんにそう言っていた。

 

「そやろ?ゆきえさん、エエ子やねんて。言うたやろ?」

 

由紀ママが私を『エエ子』やと言ってくれた!

嬉しい!!

正直ほんとに嬉しい!!

 

「ゆきえちゃん。今度ゆっくりお話ししましょう。ええ?」

 

由紀ママが真剣な表情で私聞いた。

 

「はい!もちろんです!!」

「そう。なら詳しい日にちはTちゃんに伝えるわ。それでええ?」

「はははははい!よろしくお願いします!」

「りおちゃんには私と会うこと、まだ言わん方がええからな。

わかるやんな?」

「はい。わかりました。」

 

由紀ママはりおママの方をチラッと見て小声で言った。

 

「ほなTちゃん。私お店戻るわ。」

「おう!送るわ!」

「あら。ありがとう。ゆきえちゃん、またな。」

「はい!ありがとうございました!」

 

由紀ママが立ち上がるとりおママがすっとんできた。

 

「ママ!もうお帰りですか?」

「もうお店戻らなあかんねん。また来るわ。ありがとう。」

「またいらしてください!お送りします。」

 

由紀ママとTさんをりおママと私で下までお見送りにいく。

 

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

 

由紀ママとTさんの姿が見えなくなるまで、宗右衛門町の通りでお見送りを続ける。

 

お見送りを続けながらりおママが私に話しかける。

 

「ゆきえちゃん。なんでTちゃんは今日由紀ママを連れてきたん?」

 

ドキッ!!

 

私に会わせるためだなんて絶対に言えない。

 

あれ?

でも、りおママが私にそんなことをわざわざ聞くのはおかしい。

りおママはTさんに『由紀ママを連れてきて!』とずっとお願いしていたはずなんだから。

 

「え?りおママがTさんに由紀ママを連れてきて欲しいってお願いしてたんやないんですか?」

 

私はとぼけながらそう言ってみた。

 

「そぅ…やね。そやったそやった。」

 

ママはひきつった笑顔で答えた。

 

そしてその後にこうつぶやいた。

 

「ゆきえちゃん。…店…辞める気やないの?」

 

 

 

さてさて!

どう答える?

 

つーづーくー!

 

 

私のコト 79

暑いっすねー。

 

やっと“夏!”だ!!

 

この暑い中、私は自叙伝を書くのです。

 

つづき行きます!

 

前回はこちら↓

私のコト 78 - 藤山家においでよ

 

 

Tさんから「明日クラブLのママに紹介する」と言われ、若干怖気づく小娘ゆっきぃ。

ミナミで一番大きい、しかも老舗クラブ。そのオーナーママがどんな人なのか?

自分をどう評価するのか?今日の夜にはその時間がやってくる。

 

 

目が覚めたらお昼だった。

お布団の中にTさんはもういない。

 

「コーヒー屋さん行ったのかな…」

 

独り言を言いながらボーっと起きる。

その時ふいにTELが鳴った。

 

着信の相手は『木田さん』だった。

 

ドキッとしながらTELに出る。

 

「おぉー…」

 

なんとも言えない声。

 

「あ…おはようございます。」

 

ドキドキしながらやっと言えた言葉。

 

「…なんで帰ったんや?」

 

ちょっと拗ねた声。

可愛すぎる。

 

「ふふ。だって寝ちゃったから。」

 

「……。なんで帰んねん…ブツブツ。」

 

木田さんが拗ねてる。

拗ねてブツブツ言ってることがなんだかとても嬉しい。

 

「んふふふ。怒ってるん?」

「怒ってるわ。帰らんでもええやろぉ…」

「寝ちゃったのはそっちですよねぇ?」

「起こしたらええやかんかぁ。」

「起こせませんよ。」

「なんでやー!」

 

あれ?

なんか前より普通に木田さんと話せてる。

そして私が帰ってしまったことを素直に残念がってくれている。

 

う…嬉しすぎる…

 

「ゆきえはアホや。アホー!」

「あはははは!アホはそっちやないですかー!」

「なんで俺がアホやねん!」

「あはははは!」

 

「……ゆきえ…」

 

ん?

急に真剣な声。

 

「え?どうしたんですか?何?」

「…アホ……なんでもないわ。」

「え?なに?気になるやん!」

「…アホ……帰りやがって。」

「…ごめんなさい…」

「……会いたいなぁ…」

 

え?え?え?え?

えーーーーーーー?!

 

会いたい?私に?会いたいって言った?

え?え?え?え?え?

きゃーーーーーー!!!

 

ドキドキドキドキ…

木田さんが私に会いたいって言った!

木田さんが私に会いたいって言った!

木田さんが私に会いたいって言ったーーーーー!!

 

私はこの時天にも昇るような気持だった。

 

「へ?ほんまですか?!ほんま?ほんまに?」

「…うるさい…アホ…」

 

その後何をしゃべったのか記憶にない。

ただただ嬉しすぎて舞い上がっていた。

 

「…じゃあな。またTELするわ。」

「はい!!また連絡ください!」

「…ゆきえ…」

「はい?」

「…浮気すんなよ。」

「え?え?え?」

「だから!…浮気…すんなよ。」

「はいっ!!!」

「じゃあな。」

 

 

木田さんが『浮気すんなよ!』って言った!

何?

まさかの独占欲?

木田さんが?

 

まーじーでうーれーしすーぎーーーー!!

 

「え?何?今の電話なに?どういうこと?何?どうなっちゃった?」

 

気持ちが昂り、一人でニヤニヤしながら部屋をうろつきまわる。

 

『浮気すんなよ』の言葉に元気よく『はい!!』と応える私。

お前、昨日誰とSEXしてるんだよ。

でも今はそんなのどうでもいい!

 

…いや、どうでもよくないだろ。

 

その時ガチャガチャと部屋の鍵が開く音がした。

 

ハッとして、どうにもとまらないにやけ顔をなんとか元に戻す。

 

「ゆっきえさーん♪起きたん?」

 

上機嫌のTさんが帰ってきた。

 

「うん。おはよう!コーヒー屋さん行ってたん?」

「うん♪そろそろゆきえさんが起きる時間やと思って帰ってきたんやー♪」

 

はぁ。

ナイスタイミング。

木田さんとのTELの最中じゃなくてよかった。

 

「今夜、由紀を連れていくやろ?」

「うん。」

 

由紀とはクラブLのオーナーママのことだ。

Tさんは古くからの付き合いらしく、いつも『由紀』と名前で呼んでいる。

 

「由紀はミナミでも有名なママやからなぁ。今日りおの店に連れて行ったら絶対りおはびっくりするぞぉ~!」

 

Tさんはいたずら坊主のような笑顔でそう言った。

 

「りおママは由紀ママとは面識があるん?」

「おー。りおも昔は割と売れっ子のホステスやったからな。何度かは一緒になってるんやないかなぁ?クラブLにお客さん迎えにいったりとかあったやろうし。

りおはもちろん由紀ママのこと知ってるしな。由紀もりおのこと知ってるやろなぁ。」

 

お店の“ママ”には二種類ある。

誰かに雇われてママをやっている『雇われママ』と

自分でお店を開いている(経営者である)『オーナーママ』だ。

後ろにパトロンがいることがほぼだけど、経営を自分でしているママは

みんなオーナーママだ。

 

りおママも由紀ママもどちらもオーナーママだ。

 

でも…

 

規模も金額も何もかもが違いすぎる。

きっとりおママは由紀ママに頭が上がらないだろう。

 

「あれ?そういえば…私、りおママにお店辞めるなんて一言も言ってないし、

ていうか、まだそんなつもりなかったし…

今日由紀ママをお店に連れてくるって…

どうするん?」

「大丈夫大丈夫!前からりおに由紀ママ一回連れてきてって言われてたんや。

由紀が一度でもお店に来たらハクがつくからなぁ。お客さんにも自慢できるんや。」

 

由紀ママが一度でもお店に来たらハクがつく?

そんなに有名なすごい人なん?

 

「へー…そんなにすごい人なんやなぁ…」

「大丈夫大丈夫!ゆきえさんなら大丈夫やって!俺もついてるんやし!わはははは!」

 

Tさんはずっと嬉しそうだ。

自分の力をやっと誇示できる!と意気込んでるのがよくわかる。

 

そうだった。

すっかり忘れていたけど、Tさんはミナミのホステスさんたちから結構狙われるくらい

みんなが味方につけておきたい男性だった。

どこにでもだいたい顔がきく。

どこのママもだいたい知っている。

そんな人だった。

 

「緊張するわぁ…」

「大丈夫大丈夫!」

 

そんなやりとりを何度もした。

 

同伴の食事をしながらも

 

「緊張して食べられへん。」

「大丈夫大丈夫!わははは!」

 

お店に行く時も

 

「もうお店行きたくない。」

「大丈夫!ゆきえさんらしくないで!」

 

そんなこんなでお店に到着。

 

「おー!りお!相変わらずしけた店やなぁ!わはははは!」

「なんやのTちゃん!久しぶりに来たと思ったらなんてこと言うねん!」

 

相変わらずの二人のやりとり。

私はひきつった笑顔でそれを見守る。

 

「りお!今日はこれから由紀を連れてくるからな!」

 

突然そう言われてりおママはびっくりした顔をする。

 

「え?!由紀ママ?!今日?!なんやの突然!もっとはよ言うてやぁ~!!」

「なんでや?!前からはよ連れてきてって何度も言うてたやないか!」

「そやけど…そない急に言われても…」

「なんや?!ええやろ?席にはゆきえさん着けてや!」

「そりゃゆきえちゃんを着けるわ。Tちゃんのお気に入りなんやから。私も着いていいんやろ?」

「お前が着かないでどうするんや。おかしな奴やなぁ。わははは!」

 

私はずっとひきつった顔で座っていた。

りおママがひるんでいる。

りおママがひるむ相手なのだ。

 

「じゃ、ゆきえさん。由紀を迎えに行ってくるからな。」

 

小声でTさんが言う。

 

「う、うん。わかった。」

 

「じゃりお!由紀迎えに行くわ!すぐ戻るから!」

「わかったわぁ。待ってるわ。」

 

Tさんがお店から出て行った。

すぐにりおママが私の隣にきてこう言った。

 

「由紀ママは絶対に敵にまわしちゃいけない人やで。ミナミでやっていくなら

あの人は味方にしておいた方がええ。“こっち”のバックもたくさんついてる人やからなぁ。」

 

りおママは自分のほっぺに人差し指でキズを付ける仕草をした。

 

 

さあ!

由紀ママはどんな人なのか?

どんな反応されるのか?

 

つーづーくー!